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【連載】フィランソロピー×アドボカシー プロローグ

今、フィランソロピーの手法として、「アドボカシー」が注目されています。
アドボカシーとは、課題解決のネックとなっている法律や政策、制度といった「仕組み」を変革するために行う活動です。具体的には、インターネットやマスメディアでのキャンペーン、講演、調査の実施・発表、ロビー活動や政策提言などがあります。

わかりやすい事例で言うと、「東京レインボープライド」があります。これは、LGBTQをはじめとするセクシュアルマイノリティの存在を社会に広め、”性“と“生”の多様性を祝福するイベントです。
2024年にはプライドパレードに過去最大の15,000人が参加し、イベントの延べ動員数は約270,000人の規模にまで成長しました。1994年に初めてのプライドパレードが開催されて以来、たくさんの活動家の努力の積み重ねにより、LGBTQの方々に対する理解と社会制度は、まだ十分とはいえないまでも、大きく前進したのではないでしょうか。

出典:TOKYO RAINBOW PRIDE ウェブサイト(https://tokyorainbowpride.com/news/notice/43909/)


アドボカシーには、社会の人々に気づきを与え、対話を促し、社会課題の構造を見直し、制度や政策に働きかけ、課題を根本から解決に向かわせる大きな力を持っています。

私共フィランソロピー・アドバイザーズも、アドボカシーに大きな可能性を感じており、この手法を多くのフィランソロピストの方に取り入れていただきたいと考えています。

ここで、私共が一緒に活動をさせていただいている一般財団法人ルビ財団の事例を見てみましょう。


2023年に設立したルビ財団は、ふりがな(ルビ)の普及・活用を促進することにより、国語能力及び知的好奇心・思考力の向上に寄与するとともに、外国人や障害のある人を含むあらゆる人が暮らしやすい多文化共生社会づくりに寄与することを目指しています。

【メディア「ルビフル」の公開】
当財団は、今年4月に、ルビの在り方について考えるメディア「ルビフル」を公開しました。ルビに対しては、「ルビの普及が学びの促進につながるのでもっと増やしてほしい」、「外国ルーツや障害者の方への配慮として盲点だった」といった歓迎の声がある一方で、「全部の漢字にルビをふると読みづらくなる」「漢字を勉強する動機がなくなるのでは」という懸念の声もありました。
そこで、一方的にルビを広めようとするのではなく、多様な意見を集めながらルビの意義や効果、適正なルビの量など、ルビのあり方について社会に問いかけ、社会全体で考えるきっかけを提供するために立ち上げました。

【「ルビフル本」の選書】
また、ルビがあることで大人も子どもも楽しめる「ルビフル本」の選書を開始しました。第一弾として「科学」ジャンル(ルビ財団選書)を公開し、ルビが多めの本についての関心と読書の楽しさを広めています。
さらに、実際に、「ルビが、誰にどのような効果をもたらすのか」をデータで示し、ルビについて社会で考える際の材料とすることも検討しています。法務省の協力を得て行う少年院の子どもたちへの調査や、外国ルーツの子どもとその家族の方々への調査を、専門家の方々と準備を進めています。この調査の結果を、政策提言につなげていくこともあるかもしれません。

このように、ルビ財団は、社会との対話を重視しながら、よりよいルビの在り方を模索しつつ、ルビを必要とされる人々へ適切な方法で届けていこうと、アドボカシーの手法を活用しながら活動を続けています。
フィランソロピーは、民間の主導によって、よりよい社会を作り上げていく活動です。そこには、様々な視点をもつ人々の対話と理解、納得、賛同と行動が欠かせません。

そのために、どのようにアドボカシーを活用できるのか。

このトピックを、みなさまと考えていくために、今回、米国のハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院で公共政策学(国際関係・NPO経営)を専攻する岡部晴人さん(PA Inc. リサーチパートナー)に、フィランソロピーの最先端を行く米国の状況から、アドボカシーの重要性と活用事例、それを取り巻く議論などについて、4回の連載で紹介していただきます。

#1: アドボカシーとは何か? 
#2: なぜフィランソロピストがアドボカシーに取り組むべきなのか? 
#3: アドボカシーを始めるには?
#4: アドボカシーの効果を測るには? 


日本のフィランソロピストのみなさまが、アドボカシーを活用し、活動をより充実したものにしていただけることを願っています。

(PA Inc. Co-CEO 藤田淑子)

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