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【連載】フィランソロピー×アドボカシー #2 なぜフィランソロピストがアドボカシーに取り組むべきなのか?

フィランソロピーやNPOといった領域に身を置いていると、日本にせよ海外にせよ、この社会は問題に満ちあふれているように思えてくる。課題の裏にはまた課題、その繰り返しに絶望することもある。社会課題の解決をミッションに掲げる以上、それは正しい認識であるともいえる。

しかしその一方で、これまでの歴史の中で、予想を裏切って社会課題の解決が成功した事例もまた多く存在することを見逃してはいけない。 

バングラデシュでは1980年代まで、下痢性疾患で毎年何十万人もの子供たちが5歳の誕生日を迎える前にこの世を去っていた。しかし、経口補水液の開発と普及が進んだことなどから、死者数は実に90%以上も減少し、当時4%超だった下痢性疾患による死亡率は今や0.5%未満になっている。 


図:1980年から2015年の間におけるバングラデシュの5歳未満児における下痢症による死亡率の推移
出典:Journal of Global Health

南アフリカでは長年続いていたアパルトヘイトが、国内の民衆と国連をはじめとした国際社会の運動により1991年に(少なくとも形式上は)終焉を迎えた。米国フロリダで長い間低賃金と劣悪な労働環境に苦しんでいた農家たちは、粘り強いボイコットなどの多くの努力により、労働環境の改善と70%以上の賃金増加を勝ち取った。

ベトナムでは、バイク利用者の交通事故死が多発していたが、暑い気候の中でも着用できるヘルメットが普及したことで着用率が30%から95%まで跳ね上がった。 

ベストセラーである『ファクトフルネス』が主張するように、世の中では実は多くのポジティブな変化も起きているのである。 

社会変革を支えてきたフィランソロピー 

このような社会改革の成功要因はどれも様々であり、一言で言い表せるほど単純ではない。しかしここで、先に挙げた社会変革に共通している一つの要素に目を向けたい。それは、どの運動にも、その裏には常にフィランソロピスト(篤志家)たちの支援が存在した、ということである。成功した社会運動を詳細に分析した2017年のハーバードビジネスレビューの論文がそれを明らかにしている。 

ただこのように述べると、フィランソロピーは「万能」なのではないかと錯覚してしまいそうになる。しかし、世の中には多くのフィランソロピストが存在するのに対し、未だに世の中には多くの課題が残っていることも、また事実である。

それではなぜ、先に挙げたようなフィランソロピストたちの改革は、他と異なり成功したのだろうか。

その一つの答えが、今回のテーマである「アドボカシー」なのである。先のハーバードビジネスレビューの研究が指摘するのは、成功した社会変革の実に80%は、その裏でフィランソロピストたちが「アドボカシー」に注力し、政策の変更、政府の予算配分変化など、何らかの「仕組み」の変化を要求していたということであった。 

「フィランソロピー×アドボカシー」のトレンド 

近年アメリカでは主要フィランソロピストがアドボカシーの分野に積極的に参入している。 

Meta(旧Facebook)創業者であるマークザッカーバーグとそのパートナーであるプリシラ・チャンが立ち上げた財団*であるチャン・ザッカーバーグ・イニシアティブは、オバマやブッシュといった大統領たちの選挙戦を率いたマネージャーたちを採用し、政策に影響を与えていく姿勢を鮮明にした。
アメリカの非上場企業で最大規模を誇るコークインダストリーズの創業家であるコーク家は年間4億ドルもの資金を政策と政治変革のために投じている。
*チャンザッカーバーグイニシアティブはLLC(合同会社)として設立されており、厳密な意味での財団(501(c)(3) private foundation)ではない。 

米国の214もの財団への聞き取りを実施した調査(2020) では、90%を超える財団がアドボカシー活動を実施中ないし計画中であることが判明した。さらに、その75%にあたる財団では、過去3年間の間にアドボカシーに関する資金投入を増やしてきた事実が明らかになった。特に、米国外への助成(主に国際協力分野)では、実に全助成金の内20%をアドボカシー関連の費用が占めているという調査もある。日本には同様の調査そのものが存在しないが、日本でこのセクターの方々に上記の事実を伝えると、もれなく驚きの声が上がることからみても、日本におけるフィランソロピストのアドボカシーへのコミットメントは未だに低調であることが予想できる。 

さて、ではなぜ「フィランソロピー×アドボカシー」は、社会変革との相性が良いのだろうか。言い換えれば、この記事のタイトルにもあるように、なぜフィランソロピストはアドボカシーを通じた社会変革に取り組む“べき“なのだろうか。 

本連載の第一回では、アドボカシーとは何か?と題し、アドボカシーの定義や効果を詳細に解説した。そこでは、アドボカシーとは社会課題を「仕組み」から解決することを目指す活動全体を指す言葉であり、インパクトの永続化や課題の根本要因への対処、他地域へのドミノ効果といったユニークな効果が存在することを指摘した。 

その理解をもとに、今回はなぜフィランソロピストがアドボカシーに取り組むべきなのか、事例とともに紹介したい。 

本記事のポイント
・フィランソロピストは、最も柔軟かつ大胆に、そして中心的な役割を果たしながらアドボカシーに取り組むことができるユニークな存在である。
・財団やフィランソロピストは、適法な範囲で十分に効果的なアドボカシー活動を行うことが可能である。
・むしろ、アドボカシーに取り組まないことによるリスクは大きく、ミッションの達成に必要であれば、躊躇せずに挑戦すべきである。

フィランソロピストがアドボカシーに取り組むべき理由 

フィランソロピストがアドボカシーに取り組むべき理由。それを一言でいえば、フィランソロピストはアドボカシーにおいて最も柔軟で、最も大胆で、そして最も中心的な役割を果たせる存在だから、ということになる。

❶ 最も柔軟:イノベーションの推進役 

社会課題に取り組む主体(NPOなど)に資金を提供する関係者は数多い。しかしその中でも、フィランソロピストは最も柔軟かつ迅速に資金提供先を選ぶことができる。 
(ここではフィランソロピストとは、主に富裕層の篤志家で、財団を通じた助成や大口寄付を通じて社会課題解決に取り組む者を指す。) 

政府も大きな資金提供者ではあるが、その意思決定には時間がかかることが多い。また市民への説明責任が伴うことから、認知の広まっていない社会課題への補助金などは出づらく、決して柔軟な資金提供者とは言えないだろう。小口の個人寄付者も、一人一人は柔軟に寄付先を決めることはできるが、その金額には限界がある。一度に多くの寄付金が動くことはめったにない。 

その点、フィランソロピストの資金提供は、支援すべき課題とそれに取り組む主体が見つかりさえすれば、すぐにでも多額の資金を動かせるという点で極めてユニークである。

冒頭で触れたベトナムでのバイクヘルメットの普及は、まさにその好例である。 

ベトナムでは2000年代前半まで、バイク使用者の交通事故死が多発していた。当時もヘルメットそのものは存在していたのだが、問題はベトナムの熱帯気候にあった。着用して運転するには、当時のヘルメットは通気性が悪く、暑すぎたのである。

この問題に着目したNGOは軽量で風通しの良いヘルメットを作ろうと苦心したが、そのための費用は不足していた。そこに支援の手を差し伸べたのが、当時第一線で活躍した実業家・フィランソロピストのチャック・フィーニーだった。 

彼の財団はヘルメットの着用率を高めるために何層にも重なる寄付を行った。まず、軽量で風通しの良いヘルメットを生産する同NGOの工場の立ち上げ費用を負担した。しかし、商品が店頭に並ぶだけでは人々の行動は変わらない。そこで、同財団はヘルメットの非着用が交通事故死の大きな原因になっていることを示す調査を実施し、その費用を全額負担した。さらに、政府やNGOのスタッフを集めた協議会を主催し、見事国会でヘルメット着用を義務化する法案を成立させるに至ったのだった。 

しかし、ここで終わりではない。法律が変わっても人の行動はすぐには変わらない。「ヘルメットは暑い」という先入観は消えないからだ。そこで、法律が施行されるまでの間にフィーニーの財団は他の篤志家にも声をかけ最後の資金拠出を行った。それが、大規模な広告の投下である。テレビCMや野外広告、バスの側面広告などの広告枠を買い取り、ヘルメット着用が義務化されること、通気性の良いヘルメットが存在することなどを市民に啓発した。 

この何段階にも及ぶ徹底的な資金提供により、ベトナムでのヘルメット着用率は法律の施行後速やかに上昇した。施行された2007年当時は40%だった着用率が、なんと一挙に90%超まで増加したのだった。その後、この成果を他国にも輸出するため、フィーニーの財団は他の東南アジア諸国でも同様のキャンペーンを行った(詳細はこちらのレポートを参照のこと)。 

短期間でこれだけの多岐にわたる資金拠出を迅速に行えたのは、フィランソロピストならではの特長といえるだろう。 

またこの事例でもう一つ着目したいのが、「アドボカシー」の幅広さである。第一回で解説した通り、アドボカシーとは政治家との交渉だけでは決してない。このベトナムの事例では、
 ①ヘルメット着用と交通事故死を関連付ける調査活動
 ②政治家への情報伝達活動
 ③バイク利用者の行動変容を促す啓発活動
など、第一回で触れた多くのアドボカシー活動が一挙に実施されている。そしてその結果、アドボカシーの3つの効果(インパクトの永続化、根本要因への対処、他地域へのドミノ効果)も全て達成しているのである。
まさに、アドボカシーを通じた社会変革のお手本とさえいえるフィランソロピーの事例だろう。 

 
出典:Center For Global Development ウェブサイト

❷ 最も大胆:公的支出の呼び水 

フィランソロピストによる資金提供は、最も柔軟であると同時に最も大胆でもある。先のベトナムのヘルメット着用の事例からもわかるように、一度課題と解決策が定まれば、
フィランソロピストはそこに集中的に大規模な投資を行うこと(これをビッグベットと呼ぶ)ができる。個人の小口寄付や、NPO自体の事業収入など、他の資金源ではそうはいかないだろう。

冒頭
にあげたバングラデシュの下痢性疾患の減少にも、このビッグベットが貢献している。バングラデシュでは当時下痢性疾患で何十万人もの子どもが死亡していたことは冒頭でも紹介したが、その裏には経口補水液(スポーツドリンクに近いが、それよりも水分補給に特化した配合の飲料)の普及が全く進んでいないことがあった。 

しかし政府も何もしなかったわけではない。経口補水液を公立病院の多くに配布して普及を試みたのだが、残念ながら功を奏さなかった。なぜか。当時のバングラデシュでは、子どもが下痢になった際に母親が連れていくのは、公立の病院ではなく、主に(カビラジと呼ばれる)伝統医療を行う村の治療者のところだったからだ。当然経口補水液などはもらえない。また、「下痢の治療には経口補水液が効果的」という考え自体も当時のバングラデシュには全く浸透していなかった。 

そこで、バングラデシュのNGOであるBracは大規模な国民啓発プロジェクトを行った。その額なんと22百万ドル(日本円で25億円超)の大規模投資である。1980年に始まったこれほどまでの投資は、当時Bracを支援していた大口寄付者たち無しにはなしえなかっただろう。このプロジェクトを通じて、Bracはバングラデシュ各地の多くの女性にトレーニングを施した。彼女たちは村の中を一軒ずつ回りながら、経口補水液の有効性と公立病院の受診を母親たちに説いて回ったのだった。 

こうして耳目を集めたBracの活動は、3年後にアメリカのUSAID(日本で言うJICAにあたる開発援助機関)からの大規模な資金援助を取り付けることとなる。これらの資金によって、経口補水液の生産・流通・使用のそれぞれが促進され、今では下痢性疾患による子供の死亡は90%以上減少した。 

このように、フィランソロピストによる大規模な資金投下は、政府の関心を高め、その後の政府資金拠出を誘発する効果がある(これを「呼び水効果」と呼ぶ)。柔軟で大胆な資金提供ができるフィランソロピストならではの役割だろう。 


出典:Brac ウェブサイト

❸ 最も中心的:課題と「仕組み」を繋ぐ仲人 

フィランソロピストは、課題と仕組みを繋ぐ存在として、アドボカシーにおける中心的役割を担える稀有な存在だ。

アド
ボカシーが成功するためには、まず現場で起きている課題が「仕組み」の設計者たち(多くの場合は政府や自治体)に合意されること、そして具体的な「仕組み」改革を設計する場があることが必要である。 

この点において、フィランソロピストは課題と仕組みを繋ぐ仲人として重要な役割を果たすことができる。財団の場合であれば、助成などのプログラムを通じて、現場の課題を理解するNPOや社会起業家とのコネクションがもとより多く存在する。これにより、課題解決のネックとなっている「仕組み」が何かを理解することができる。同時に、政府や自治体にとっても財団は、必要とあれば政策に対して資金拠出をしてくれる重要な相手である。また公益性の高い法人としての性質上、特定の政党に賛成も反対もしない立ち位置であることから、政府や自治体からの拒否反応も少ない。 この関係性を生かし、NPOと政府・自治体を繋ぐ役割を担えるのが、フィランソロピストのユニークな点である。 

アメリカでは喫煙者の減少にフィランソロピストが大きく貢献したことがよく知られている。ジョンソン&ジョンソン創業者が立ち上げたロバートウッドジョンソン財団は、当時蔓延していたタバコと肺がんに立ち向かうために長年努力を続けた財団である。タバコ産業の反対を乗り越えるため、同財団は肺がんの課題を現場で理解してきたアメリカがん協会と協力し、まず「タバコが有害である」ということを科学的に証明することから着手する。現在では当たり前であるこの結果を、科学者、医者、政府のリーダーたち、そして喫煙者本人たちに腹落ちしてもらえるまで、同財団は研究への資金拠出を10年以上にわたって続けたのだった。 

並行して、同財団は多様な関係者を巻き込んだ議論の場を作ることにも注力する。医者や政府の役人、市民らを招いて、どのような政策が最も喫煙者減少に効果をもたらすかを議論した。その他にも、「喫煙がクールである」という意識を改革するためのテレビCMやたばこの代わりとなるニコチンガムの開発など、様々な手段を粘り強く続けた結果、数十年の間で成人喫煙率は42%から15%へと減少した。 

この事例からわかるのは、たとえ課題が一部の人に明確であったとしても、それを皆が理解し、「仕組み」の変革にこぎつけるまでには多くの労力を要するということである。ハーバードビジネスレビューはこう指摘する: 
「優れた慈善活動家は、取り組むべき問題に合意するという一見簡単なステップが、実は極めて厄介であるということをきちんと理解している。」 

この長く険しい道のりを中心的にリードすることがフィランソロピストには可能であり、また求められている役割でもあるのだ。 

出典:robert wood johnson foundation ウェブサイト

「アドボカシーはリスク」の誤解 

ここまで、フィランソロピストはアドボカシーにおいて最も柔軟で、最も大胆で、そして最も中心的な役割を果たせる存在であることを紹介してきた。 

しかし、それにも関わらず近年になるまでアメリカでさえフィランソロピストのアドボカシー参入がなかなか進まなかったのはなぜか。その背景には、フィランソロピストたちの間でいくつかの思い込みや誤解があったことが大きい。これらの思い込みは日本でも今後顕在化してくると思われるため、主要な誤解を取り上げてここで解消したい。 

誤解❶ アドボカシーに取り組むのは法律上のリスクである 

アドボカシーは違法になる恐れがあるから取り組まない、という声はよく上がるが、法律上の禁止行為さえ把握していれば、アドボカシーは問題なく実行できる。 

まず、アドボカシーの主体が個人ないし一般財団法人や一般社団法人の場合、そもそも活動に制限はないためロビイングを含むアドボカシーは問題なく行える(もちろん、他の贈賄罪などに抵触しない範囲で)。

次に、(主に資金の受け手となる)NPO法人の場合は、認定を受けているかいないかで僅かに規定は異なるものの、本質的には禁止事項は3つだけである。第一に宗教の推進、第二に政治上の主義の推進/反対、第三に特定の候補者や政党の推進/反対である。アドボカシーは一見第二の要件に抵触するように思えるかもしれないが、内閣府が明確に示しているように「具体的な政策提言型のNPO法人の活動については、政治によって具体的な政策を実現しようとするものであり、政治上の主義の推進には当た」らないとされている。つまり、第三の要件である「特定の候補者や政党の推進/反対」に抵触しないことさえ担保できれば、具体的な政策提言は問題なく行えるということである。 

(本記事の内容は内閣府の資料に基づくものですが、法的な保証を意味するものではありません。実際にアドボカシーに取り組まれる場合には、専門家の助言を得ることを推奨します。) 

ちなみに、アメリカでもアドボカシーには概ね同様の条件が付いている。一方、アメリカの場合は、非課税ながら特定の政党支援も一定の範囲で行える法人格(501(c)(4)など)が別個存在し、近年はその法人格を使ったロビイングも広まってきている。 

誤解❷ 財団の役割は助成がメイン、アドボカシーはサブである 

もう一つのよくある誤解として、アドボカシーは「余裕が出てきたら」やるものであって、そうでなければ助成や寄付を行っていればよい、というものである。 

しかし、これは「アドボカシーに取り組む効果」を過小評価していると同時に、「アドボカシーに取り組まないリスク」も過小評価していると言える。 

まず、第一回から繰り返し強調しているように、アドボカシーは社会変革に不可欠なツールである。直接支援だけでは社会課題の根本要因に対処し、インパクトを永続化することは極めて難しい。 

そして、アドボカシー支援は実はROI(投資に対する効果)が高いことも知られている。日本ではこの分野の助成金がいまだ少ないため定量的な効果検証は難しいが、アメリカの調査ではアドボカシーのためにNPOなどに提供された資金のROIは平均で115倍だということが分かっている。(110のNPOをサンプルとした調査。地域別にみても分散は小さく、概ね90~150倍のROIとなっている。)つまり、アドボカシーに取り組まずに助成だけを続けることは、機会コストでもあるのだ。筆者が以前会話したアメリカのフィランソロピーの専門家は、「資金が限られているときほど、むしろアドボカシーに資金を注力すべきだ」とさえ言っていた。 

さらに、アドボカシーをせずに放っておくと、他の企業や団体が全く正反対のアドボカシーを繰り広げる可能性がある。先ほど挙げたタバコの例がまさにそうだが、ジョンソン財団がアドボカシーを始めなかったら、あるいは途中でやめていたら、タバコ業界からのカウンターアドボカシーに敗北を喫していたことだろう。 

アドボカシーは攻めであると同時に守りでもあるのだ。 

ミッションに立ち返る 

ここまで、フィランソロピストがアドボカシーに取り組むべき理由を紹介してきた。だが、一人一人のフィランソロピストが何に取り組むべきか、それは実際にはその人のミッション次第だと言ってよいだろう。もしミッションが「後世まで自分の名前を残すこと」なのだとしたら、必ずしもアドボカシーに取り組む必要はないのかもしれない。 

しかし、もし少しでも「社会の課題を解決したい」「社会に自分の受けてきた恵みを還元したい」という思いがあるのであれば、アドボカシーほどそれに適したツールはないだろう。今回紹介したように、フィランソロピー×アドボカシーの相性は抜群である。新たな領域に踏み出すことは勇気が必要だが、保守的であり続けてもミッションは達成できない。日本でも広まりつつあるこの潮流に、第一線で関わるフィランソロピストが今後増えていくことを期待したい。


とはいえ、いざ取り組もうと思うと、具体的にどうアドボカシーに取り組むのか、効果を測ることはできるのか、などいろいろな疑問が出てくる。それらについては、次回以降詳細に紹介したい。 

(PA Inc. リサーチパートナー 岡部晴人)


所属:米国ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院 公共政策学(国際関係・NPO経営)専攻
【連載】フィランソロピー×アドボカシー #1 アドボカシーとは何か?

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