私たちは、社会に良いインパクトを生み出したい個人や法人に向けて、あらゆるサポートを提供するフィランソロピー・アドバイザーズ(株)です。「フィランソロピー」というと馴染みのない言葉に聞こえるかもしれませんが、「社会貢献活動」というとイメージがふくらむ方も多いでしょう。
このページではこれからフィランソロピーに取り組みたい方に向けて、基本が学べる講座を用意しました。
前半では、過去の歴史を振り返りながら今日におけるフィランソロピーの国内外の動向を紹介します。
後半では、フィランソロピー活動には欠かせないフィランソロピー・アドバイザーについて、その役割や仕事内容についても触れていくので、最後までご覧ください。
それでは、まずはフィランソロピーとは何かについてみていきましょう。
「フィランソロピー」は、ギリシャ語で「人類に対する愛」を意味します。博愛精神に基づき、困難を抱える他者に手を差し伸べる行為として古くから存在してきました。現代では、Walter W.Powell et al. eds. (2006) によって「公共的な利益のためにボランティアや寄附・助成を自発的に行うこと」と説明されています。
このように、一般的にはこれまでの「フィランソロピー」は、個人がボランティアに参加したり、寄付を行う行為を指してきました。しかし、今日における「フィランソロピー」は、資産をもった方々が、個人の活動をはじめ、財団や企業を通じて取り組む、より専門性の高い社会貢献活動をさすようになりました。その中には、寄付だけでなく、投融資や、世論を巻き起こす広報活動や政策提言なども含みます。
よく似た言葉であるCSR(Corporate Social Responsibility)は企業が取り組む社会貢献活動であり、メセナはその中でも特に芸術文化支援を指します。ボランティアは金銭ではなく労働奉仕によって社会貢献するというフィランソロピーの一つの手段です。このように、「社会貢献」という言葉がフィランソロピーと最も近い意味を持ちます。
「フィランソロピー」は、その活動の形を時代と共に変化させてきました。
19世紀までにみられる伝統的なフィランソロピーは、慈善の思いから、個人が直接宗教団体などに寄付をするものでした。
20世紀初頭には、事業で巨額の富を築いた起業家が助成財団をつくりました。彼らは、より戦略的で、成果志向をもった活動へと、その取り組みを発展させます。
21世紀に入ると、フィランソロピーはインパクトを重視するようになります。インパクトとは、フィランソロピー活動を通じてアプローチする社会課題が、どれほど解決されたかといった成果です。そして、社会課題へのアプローチは非営利団体だけでなく、営利企業(ソーシャルビジネス)の参入も増えたことから、支援の形は寄付だけでなく投融資を含めた形へと多様化してきました。
日本経済が好調だった1980年代~90年。多くの事業オーナーが財団を設立した背景には、フィランソロピーへの思いに加えて、税制上のメリットもありました。例えばビジネスを成功させた起業家が、フィランソロピーへ取り組むために財団運営を始めるとします。財団の運営資金としては、自社(自身)の持ち株の一部を財団に譲渡し、株式の配当で財団を運営するものが主となっています。国や地方自治体の認定を受けた財団は、税制上のメリットがあったことに加え、好景気・高金利が後押しをした結果、バブル期の財団設立数は下図の通り1990年をピークに右肩上がりに増えました。
21世紀に入った現代では価値観の転換が起こっています。バブル期に創設された財団の創業者は退任し、次世代ファミリーが運営に携わる時代です。財団の歴史を振り返り、今の時代に求められていることは何か、ファミリーとして大切にしたい価値観は何かを問い直し、新しい方向性を定義する移行期にあります。
また、新興起業家の台頭も挙げられます。彼らは上場後、社会のために自身の資金と経験を活かしたいという強い思いを持っています。そこで次の活動の場としてフィランソロピーに取り組む事例が増えています。このような方々の中には、フレキシブルに自身の価値観にあった社会貢献事業を行いたい、課題解決の成果を重視したいという思いを優先し、税制メリットの大きい公益財団法人ではなく、一般財団法人という組織体制を選ぶ方が増えています。
欧米諸国では、フィランソロピー活動が活発に行われています。まず、主要国を対象としたマクロデータを見てみましょう。主要国の助成財団数では、アメリカが約80,000団体と突出し、その後ドイツ、スイスが続きます。他の主要先進国と比較して日本で活動する団体の数自体が少ないことがわかります。
■主要国の助成財団数
また、対名目GDP比の個人寄付額のデータを見てみましょう。
アメリカは1.55%(34兆5,948億円)、イギリス0.47%(1兆4,878億円)に対して、日本は0.23%(1兆2,126億円)と非常に低い割合です。
例えばアメリカで寄付市場が大きい理由として、格差の拡大や国による社会保障制度が手薄なことが、フィランソロピーが発展の理由の一つとしてあげられます。アメリカほどではないですが、格差の拡大や社会的企業・SDGsの重要性が広く認知されてはじめている日本では、まだまだフィランソロピーが活発に行われる余地があると感じています。
Microsoft の元会長ビル・ゲイツは、2000年当時妻であったメリンダ・ゲイツとBill & Melinda Gates Foundation(ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団)を設立しました。2023年の単年予算として83億米ドル(約1兆1,800億円)を掲げる世界最大の慈善組織です。「すべての人が健康で生産的な生活を送る機会を得られる世界を実現すること」をミッションにかかげ、医療、貧困削減を初めとしたフィールドで資金提供や政策提言・アドボカシーに取り組んでいます。
Facebookを運営するMeta Platforms, IncのCEO マーク・ザッカーバーグは、妻と運営するChan Zuckerberg Initiative(チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ)を通じてフィランソロピーに取り組んでいます。「すべての人にとって、より包括的で公正かつ健全な未来を築くこと」をミッションに、科学、教育、気候変動、起業家支援、地域開発等に寄付や投融資の形で支援しています。事業内容に制約がある財団ではなく、日本でいう合同会社に近い組織で運営をしています。2015年の創設以来、48億米ドル(約6,800億円)を寄付、300百万米ドル(約425億円)を投資しています。
Amazonを創業したジェフベゾフの元妻であるマッケンジー・スコットは、アメリカの小説家でありフィランソロピストです。2019年以降、1,600以上の非営利団体に対し140億米ドル(約2兆円)の寄付をしたことを公表しています。自身の資産の半分以上を寄付する慈善キャンペーン「Giving Pledge」にも参加する、代表的な女性フィランソロピストの1人です。彼女の支援スタイルは「Trust Based Philanthropy」と言われており、支援先との間の信頼をベースに、資金の使い方等は支援先に任せるという方法を取っています。
出典:「新しいフィランソロピーを発展させる エコシステムに関する調査」一般財団法人社会変革推進財団
欧米諸国には、フィランソロピストを支える様々なプレイヤーが存在します。具体的には、
・資金提供者向けの寄付教育プログラムを提供する団体
・資金提供者同士のネットワークを運営する団体
・資金提供者の寄付をNPOに仲介する団体
・フィランソロピー活動に特化した調査・データ提供を行う団体
・資金提供者に寄り添った専門的なコンサルティング提供するフィランソロピーアドバイザー
が挙げられます。フィランソロピー活動を始めたい個人が、必要な情報や専門家にアクセスできるエコシステム(※)が整備されているのです。
※フィランソロピー業界におけるさまざまなプレイヤーが共存・依存しながら存在する生態系のこと
日本では、慈善活動を始めたいと思ったときに専門家が存在しません。欧米諸国のようなエコシステムも存在しないため、何から始めていいか分からない場合がほとんどです。個人富裕層の資産運用の相談先は、プライベートバンカーや弁護士、会計士がほとんど。しかし、彼らはフィランソロピーの専門家ではありません。
そこでフィランソロピー・アドバイザーズでは、フィランソロピーに特化したコンサルティングを提供し、資金提供する皆さんの価値観に沿ったフィランソロピーのあり方を実現する手助けをしています。次の章では、実際に私たちが「フィランソロピーアドバイザー」として、どのような役割を持ち、資金提供者の皆さんにお役立ちできるかご紹介します。
フィランソロピー・アドバイザーは、社会貢献事業や寄付を行う意思を持つ人に対して、社会貢献プロジェクトや団体の運営、目的にあった資金提供の方法などをアドバイスし、フィランソロピーの成果を向上させる役割を担う存在です。フィランソロピー・アドバイザリーの始まりは、アメリカにて民間財団が普及し始めた20世紀初頭、20世紀後半に本格的に認知度が高まった時期にさかのぼります。
フィランソロピ・ーアドバイザーという職業は、アメリカで発展してきました。専門的なアドバイスを提供できる証として、資格制度が存在します。例えば、The American Collegeが運営するCAPⓇ(Chartered Advisor in PhilanthropyⓇ)は、2003年に始まったフィランソロピーアドバイザー資格です。2022年までに約2,600人が資格を取得しています。日本にはアメリカのような資格制度は存在しませんが、当社にはCAP資格取得者の日本人第一号メンバーが在籍しています。
フィランソロピー・アドバイザーとファンドレイザーは、誰の視点に立って支援をするかという点で逆の立場となります。ファンドレイザーは、NPOなど非営利組織の立場で「資金調達(寄付集め)」を支援する専門家を指します。一方で、フィランソロピー・アドバイザーは、企業や個人富裕層など「資金の出し手」の立場で、彼らのミッションの実現のための資金の有効な使い方をアドバイスします。
フィランソロピーアドバイザーの仕事は、単に寄付先を紹介するだけではありません。資金提供者の思いや取り組みたい課題を丁寧にヒアリングした上で、戦略策定・施策の選択・実行(※)、効果測定までを一貫して支援します。
STEP
動機の明確化と
目的の設定
STEP
解決したい課題の
分析・調査
STEP
戦略の策定
STEP
手法の選択
STEP
実践
STEP
効果の測定
(社会的インパクト評価)
※当社ではフィランソロピー活動を組織内部のメンバーとして支える、フィランソロピー・スターターサポートを提供しています。
フィランソロピー・アドバイザーが対象とするお客様は、フィランソロピーに取り組みたいたい個人、財団や資産管理会社です。具体的には、以下のお客様に対して価値提供しています。
1)これからフィランソロピー活動を始めたい方
2)すでにフィランソロピー活動に取り組んでいて、活動内容の改善、評価に取り組みたい方、外部の視点を取り入れたい方
欧米諸国ではフィランソロピーアドバイザーは1つの専門職です。中でも「Rockefeller Philanthropy Advisors」(ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズ)はアメリカ最大かつ業界最大手のフィランソロピーに特化した専門家集団です。石油開発で成功し財を築き上げたロックフェラー家のファミリーオフィスから独立し、2002年に非営利組織として創設されました。当社では、同団体のSenior Vice PresidentであるWalter Sweet氏をアドバイザーに迎え、常に最新の業界動向や事例にアクセスできる体制を構築しています。
最後に、当社で提供するフィランソロピーアドバイスの事例をご紹介します。
クライアント
事業オーナー
支援内容
財団法人設立・運営
ゼロから財団法人設立~バックオフィスおよび事業運営をご支援
現役の事業家の方が仲間の皆様と共に立ち上げられた、主にアドボカシー/広報活動を行う財団法人の設立をご支援しました。現在、理事の方々と共に、事業戦略の立案と事業計画作りを行っています。
PA Inc. の提供アドバイザリー
クライアント
財団の設立ファミリー・メンバー
支援内容
フィランソロピー(資金提供・事業活動)
歴史ある公益財団法人の「活動の振り返り」と「今後の戦略作り」
設立来の財団の活動を振り返り、「財団の強みは何か」「今、社会から何を求められているか」「財団を通じてファミリーおよび自分自身は何を達成したいか」について、設立ファミリーの次世代メンバーである事務局長が、ご自身なりの答えを見つけられました。
PA Inc. の提供アドバイザリー
参考:川野紘子さん「社会の変化に合わせた財団運営で社会的インパクトを追求する、老舗奨学財団の取り組み。川野小児医学奨学財団」
以上で「フィランソロピー基礎講座」は終わりです。
いかがでしたでしょうか。
本講座を通じて、フィランソロピー活動に対する理解が深まっていたら嬉しいです。
当社では、フィランソロピーに関する専門的なアドバイスを提供するフィランソロピー・アドバイザーサービスを提供しています。新しくフィランソロピーを始めたいと考えられた方、もしくは既にある取り組みを改善したいと考えられた方は、お気軽にお問合せください。
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