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フィランソロピー・アドバイザーズでは調査研究事業の一環として、日本における難民問題に焦点をあてた調査レポート「日本における難民の課題とオルタナティブな支援の形」を発行しました。
本レポートでは、母国での紛争や迫害を逃れ、日本に庇護を求めてやってきた外国人が難民として生きていく上で直面する問題や課題を取り上げ、課題解決の糸口を分析しています。後半では、難民支援を目的に活動する複数の団体を取り上げ、中でも当社が支援を推奨する団体「特定非営利活動法人WELgee(以下、ウェルジー)」について紹介します。
難民支援に関するフィランソロピー活動を始めたい方、すでに活動されている方はぜひお役立てください。
■調査レポートは以下よりダウンロードいただけます。
【調査レポート】「日本における難民の課題とオルタナティブな支援の形」
当社が調査レポートのテーマとして難民問題を取り扱う理由には、個人的な問題意識と社会的な機運の高まりがありました。
日本には、在留資格のない人や滞在許可の更新が認められず国外退去を命じられた外国人を強制的に収容している難民収容施設(正式名称:東日本入国管理センター)のうちの一つが茨城県牛久にあります。本国に帰ると迫害の恐れがあることや、日本に家族がいること等を理由に強制送還を拒否する収容者が多く、結果的に長期収容が問題となっています。
2022年、牛久の難民収容施設を舞台にしたドキュメンタリー映画「牛久」が公開されました。映画は、小型カメラを使った潜入撮影を通じて行われ、施設内の収容者の様子がリアルに描写されています。カメラが捉えているのは収容された人々が暴力を受け、拘束されるなど非人道的に扱われている悲惨な様子でした。
自分(PA inc.小柴)の故郷は茨城県牛久。自分の街のことなのに、何も知らずに生きてきたことに衝撃を受け、この問題に対して何か取り組まなければいけないと考えました。
2021年3月には名古屋出入国在留管理局の施設で、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが体調不良を訴えて亡くなるという痛ましい事件がありました。当時、テレビや新聞では大々的に報道され、日本の難民収容施設における問題が明るみになりました。
その後、2021年8月にはアフガニスタンに駐留するアメリカ軍の撤退を受けて、イスラム主義勢力タリバンが実権を握り、多くのアフガニスタン国民が難民として国外に流出。2022年には日本でも異例の規模となる114名が難民認定されたと報道されています。
2022年2月には、日本政府によるウクライナ避難民の受け入れが始まり、2023年7月時点で2,119名が在留避難民として生活しています。
名古屋にある入国管理局での死亡事件、アフガニスタン難民、ウクライナ避難民と、ここ数年で難民問題に対する社会的気運は大きく高まったと感じています。一方で、多くの人々にとって難民問題は自分の生活とはかけ離れたものであり、難民が抱える問題に対してどのようにアプローチしたらいいか分からない人もいるでしょう。
そこで、本レポートでは、日本の難民問題が抱える課題を明らかにしたうえで、これから難民問題に対するフィランソロピー活動に取り組みたい人がどのように支援をすべきか情報提供をすることを目的に作成しました。
本レポートの概要を紹介します。
1章、2章では日本における難民問題について概況を紹介します。3章、4章では、難民当事者が日本で生活するにあたって直面する課題と、それぞれの課題に対して取り組む法人を紹介します。5章では、日本における難民問題を解決するために重点的に取り組むべき課題(レバレッジポイント)を分析した上で、6章で当社の支援推奨団体「ウェルジー」について団体情報及び活動内容、今後の資金計画等についてまとめています。
■目次
3.難民当事者が直面する課題
4.各課題に取り組む団体
5.課題解決のためのレバレッジポイント
6. 支援先のご提案
日本に庇護を求めてやってくる外国人は、難民認定申請から難民認定の結果が出るまで平均約4.5年間を経済的、社会的、精神的にも非常に不安定な状態で過ごします。難民認定前の人々を難民認定申請者と呼びますが、難民認定申請者が抱える課題は、生活(言語、メンタル、適切な情報へのアクセス)、住居、社会保障、生活資金、就労と多岐にわたることが明らかになりました。
今日の日本では様々な難民支援団体が、難民認定申請者に対する支援に取り組んでいます。調査の中で、それぞれの団体が非常に重要な支援を提供していることが明らかになりました。
一方で、日本の難民認定率が急激に上がることが現実的でない中、難民認定申請者が、安定的・長期的に安心して生活する環境を整えるためには、「難民」としてのみならず日本において「人材」として就労による活躍の道を切り拓き、キャリアを築ける環境を創ることが有効だと考えました。
そのためには、難民認定申請者が目指す仕事を行うために必要なスキルを身につけ、適切な情報によって自身で意思決定できる環境が必要な要素です。このような新しい発想で難民支援に取り組む団体は他に存在しないためフィランソロピー・アドバイザーズは、難民に特化したキャリア育成と就労サポートに取り組む「ウェルジー」への資金支援を提案します。
ウェルジーは、日本に逃れた難民とともに未来を築く団体です。
紛争・迫害などから逃れ日本にやってきた難民たちが、経験や専門性を生かして希望を持って日本で人生を再建するため「就労・キャリア」に特化したプログラムを展開しています。難民人材の強みを、日本企業のダイバーシティ推進・イノベーション創出に生かす人材紹介サービス「WELgee talents」、キャリア教育やメンターシップ、スキル開発などの育成機会を提供する「育成事業」、一人ひとりの難民が持つスキルや経験を、日本社会の様々なアクターの課題解決に生かし、お互いの強みを生かした価値創造を行う「共創事業」を運営しています。
同社の活動内容や資金計画は、レポート内にてご覧ください。
■団体概要
団体名 :特定⾮営利活動法⼈ WELgee(ウェルジー)
ウェブサイト:https://www.welgee.jp/
所在地 :東京都渋⾕区恵⽐寿4-20-3 恵⽐寿ガーデンプレイスタワー27階
代表理事:渡部カンコロンゴ 清花
設⽴ :2018年2⽉(2016年3⽉より任意団体として活動開始)
チーム :職員11名、インターン・プロボノ60名、顧問弁護⼠、顧問⾏政書⼠
ビジョン:⾃らの境遇にかかわらず、ともに未来を築ける社会
事業内容:(1) 難民に特化したキャリア育成と職業紹介事業
(2) 難民の日本社会への統合を促す事業
(3) 難民の現状と課題を調査・発信する事業
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