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【寄稿連載】歴史上もっとも「自由」になった公益法人の話 〜“安定”の先にある“変革戦略”へ〜 ②

本シリーズは、内閣府 公益認定等委員会事務局で、公益認定申請を担当する伊藤憲一氏によるブログです。
数多くの日本の財団法人と向き合ってきた立場から、氏が日々の業務の中で感じたことをお届けします。

伊藤氏寄稿連載 第1回:事業報告の前に「戦略」を。なぜ、善意は詰みあがっていかないのか?は、こちら

第2回:その「尊い活動」を、さらに「社会を変える力」へ

前回は、善意と誠実さだけでは埋まりきらない「何か」について触れました。その正体を探るため、今回は多くの法人が長年大切にされてきた「奨学金事業」や「助成事業」を例に、一緒に考えてみたいと思います。

「動機」は自由。その先の「価値」を信じる

公益法人を設立するきっかけは、人それぞれです。
「税制の優遇を活かしたい」「手元にある資金を世の中に役立てたい」——こうした動機は、決して後ろめたいものではありません。

制度が用意したインセンティブを賢く活用し、その結果として、
・学びを諦めずに済む学生が増える
・最先端の研究が前に進む 
・困難に直面している人の支えになる 

これらは間違いなく、社会にとって不可欠で尊い営みです。また、何十年も変わらずに支援を届ける継続力は、それ自体が誇るべき実績であり、事務局の皆様の並々ならぬご尽力の賜物です。この連載は、その尊い積み上げを否定するものでは決してありません。

真剣だからこそ突き当たる「静かな違和感」

しかし、現場で真摯に活動を続けているからこそ、ふとした瞬間にこんな思いがよぎることはないでしょうか。

「20年前と比べて、この課題は本当に小さくなっているだろうか」
「毎年多くの申請が来る。それは、助けを必要とする人が減っていない証ではないか」
「個別の支援はできているが、根本的な解決に近づいている実感がない」

これは、活動が不足しているから感じるのではありません。むしろ、「目の前の人を救うこと」に全力で向き合ってきたからこそ見えてくる、極めて誠実な問いなのです。
その違和感の根底にあるのは、「支援のその先、社会をどう変えたいのか」という、もう一段深い視点への招待状かもしれません。

「和らげる支援」と「変える戦略」のバランス

奨学金や助成金は、主に「今、そこにある困りごと」を和らげる大切な役割を担っています。

・学費が足りない → 今、支払うことができ、学びを継続できる
・研究費が足りない → 今年、研究を止めることなく進められる
・運営資金が苦しい団体 → 今、活動を止めることなく継続できる

これらは極めて重要ですが、一方で「支援が不要になる社会構造」へのアプローチとは、また別の次元の話でもあります。現状のままでは、来年も、再来年も、同じ理由で困る人たちが現れ続ける可能性が高いからです。

今、求められているのは「意味の言語化」

ここでお伝えしたいのは、「今の事業を変えるべき」ということではありません。大切なのは、その事業が社会の中で「どんな役割」を果たしているのかを、改めて言葉にしてみることです。

・なぜ、私たちはこの支援を届けているのか?
・何が変われば、この事業は「役目を果たした」と言えるのか?
・変えたいのは「個人の状況」か、それとも「社会の仕組み(構造)」か?

これらを明確にしないまま事業を続けると、活動は感謝され、高く評価されながらも、皮肉なことに「社会全体は動かない」という膠着状態が続いてしまいます。

「尊い活動」を「変化につながる力」へ

答えは、今の事業の延長線上にあります。 大切なのは、事業の“意味”を「社会変化の文脈」で捉え直してみることです。
例えば「奨学金」を、
・奨学金は、「一時的な支援」なのか
・それとも「教育格差という構造への介入」なのか
「助成事業」を、
・助成は、「活動支援」なのか
・それとも「新しい社会モデルの実験」なのか

同じ事業内容であっても、目指す目的地をどこに設定するかで、明日からの戦略は劇的に変わります。

伊藤 憲一 (公益認定等委員会 事務局 公益法人行政担当室)
2011年4月から2014年3月まで、また2019年7月から現在まで、内閣府公益認定等委員会事務局に在籍し、通算約10年にわたり公益法人制度に関わる業務に携わってきました。2025年3月までは、公益法人の定期提出書類の確認や変更認定、立入検査を中心に担当し、同年4月からは新規認定総括として、公益認定申請に特化した業務を担っています。

伊藤氏とPA Inc. Co-CEO藤田の対談記事  【連載】『都市伝説』の真相に迫る③ は、こちら

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