KNOWLEDGE
ゲストスピーカー:
一般社団法人アース・カンパニー(以降、アース・カンパニー)
創設者 濱川明日香氏・知宏氏
モデレーター:
一般財団法人社会変革推進財団(以降、SIIF)
事業本部長代理 フィランソロピー・アドバイザー 藤田 淑子
アース・カンパニーは、インドネシア・バリ島で「リジェネラティブ」な未来を作るための事業を展開する。同団体では人と社会と自然が共鳴しながら発展する未来に向けて、並外れた変革力をもつ起業家を支援するだけでなく、個人や法人向けのプログラムを通じてリジェネラティブな未来づくりへの意識改革、構造改革にも挑む。また自らもエシカルホテルの運営を通じて循環型社会におけるビジネスのあり方を体現している。2030年に向けて、支援規模・事業の拡大を通じてより循環型、再生型社会を生み出すことを目指している。
<団体概要>
団体名 :一般社団法人Earth Company(和名:アース・カンパニー)
設立日 :2014年10月6日
住所 :107-0062 東京都港区南青山 2-15-5 FARO1F (東京オフィス)
Banjar Mas, Sayan, Ubud, Gianyar, Bali, Indonesia (バリオフィス)
URL :https://www.earthcompany.info/ja/
事業内容:インパクトヒーロー支援事業
インパクトアカデミー事業
バリ島エシカルホテル事業
冒頭、SIIFの藤田より本日のキーワードである「リジェネラティブ」とは何か、について解説がありました。
リジェネラティブとは英語で「Regenerative」日本語では「再生的な」と訳されます。本の言葉を借りて説明すると「あらゆる行動や決定の中心に生命をとらえること」「自然の叡智に学び、再生型のシステム変容を促すこと」と言われます。
地球環境にとっていいことという意味では「サステナブル」という言葉を耳にする機会があるでしょう。確かに両者は似ていますが、サステナブルは「今あるマイナスをゼロにする」取り組みをさします。一方、リジェネラティブは「今あるマイナスの課題解決と創造・改善、プラスのインパクトを生み出す」点で異なります。
リジェネラティブへの理解を深めるため、リジェネラティブ「ではない」世界を紹介します。
■プラスチックゴミによる海洋汚染
地球の炭素を吸収する資源であり、食糧源でもある海洋がプラスティックゴミで汚染されているという現状があります。海洋生物への健康被害が見られるだけでなく、海中でマイクロプラスティックとなったゴミが水や貝類を通じて人体にも取り込まれているのです。
■巨大フードビジネスによる弊害
巨大フードビジネスによる弊害とは、世界規模で展開するフードチェーンがもたらす土壌悪化、人権問題、健康被害などをさします。彼らは、どこの国でも同じ味の商品を提供するために均一的な原材料を大量栽培する必要があります。
その弊害として、土壌劣化や汚染、農業従事者への過度なプレッシャーによる人権侵害がおこり、消費者にとっては超加工品を食べ過ぎることによる健康被害がみられています。消費者が意識を変え、なるべく土地に由来する物を食べる、有機栽培の物を食べる選択をすることが必要です。
■資産運用における矛盾
金融の世界でも自身の資産運用の手法がリジェネラティブであるか、という視点を持つ必要があります。例えば、運用収益をリジェネラティブな取り組みをする団体に支援していても、その収益源が地球環境問題を生み出している企業に対する投資であれば、トータルではリジェネラティブな行動ができているとは言えません。
運用にあたっては、ESG投資、インパクト投資の視点を持ち、社会をより良くする事業へ投資できているか立ち止まって考えることが大切です。
運用資産のすべてをサステナブル投資と寄付にあてている事例として、香港の大手不動産会社のファミリーオフィスであるRSグループがあります。サステナブル投資のパイオニアとして試行錯誤されてきた様子をインタビューした記事があるのでご覧ください。
次にアース・カンパニーの代表および共同創設者である濱川明日香氏・知宏氏より、同団体の取り組みの背景と活動内容を紹介いただきました。
アース・カンパニーが取り組む課題は、飛躍的な経済発展による地球・生態系システムの破壊です。ここ70年、世界は飛躍的な経済発展を遂げ、人口やGDPは急成長、一方で環境への負担も大きく増加していることがデータでもわかっています。
気候変動という言葉が騒がれていますが、今や気候・生態系は崩壊しています。これは遠い太平洋諸国の問題だけでなく、私たちの日本にも同じ危機が迫っています。積極的な気候対策をしない場合、海面上昇による浸水被害が日本を襲うという試算もあります。
この急激な経済発展の末に、人類は幸福になったのでしょうか。チリの経済学者は、経済発展(個人消費)によるウェルビーイング(幸福)の上昇には閾値があると言います。つまり、一定の経済発展は幸福に寄与するものの、一定以上の発展、消費増大は幸福度と関係がありません。
必要以上の急激な経済発展の裏では、人々のストレスとメンタルヘルスが悪化していることも問題です。ストレスフルな心身では、自分以外の社会や地球を育み、慈悲すること心がもてず悪循環のスパイラルが起こります。
そこでアース・カンパニーでは、「次世代につなぐ未来のために、人類と地球が共反映するリジェネラティブなあり方を追求」するというミッションに基づきインドネシアバリ島で3つの事業を展開しています。
1. リジェネラティブな世界を創る志を持つ起業家を支援するインパクトヒーロー事業
2. リジェネラティブな世界とは何かを学ぶインパクトアカデミー事業
3. リジェネラティブな世界を体現し、体験するホテル事業
この3つの事業を通じて、従来の地球をサステナブルな世界へ、そしてその先にあるリジェネラティブな世界へとアップグレードしていきます。
1.インパクトヒーロー事業
インパクトヒーロー事業は、今ある課題を解決する、もしくは課題を引き起こさないための取り組みをするチェンジメーカー(起業家)を支援する事業です。
アジア太平洋から志ある起業家を募集し年に一人を選出、3年間寄付やプロジェクト支援などありとあらゆるサポートを行うものです。2021年からは、10名程度のファイナリストにも支援の幅を広げ、今や太平洋8ヶ国で21のプロジェクトを支援し、寄付実績1億円を超えています。
毎年1人選ばれるヒーローには、手取り足取り全力でサポートします。
具体的には、中長期的にどんな成長を描き、そのためにどんなロードマップが必要かや、資金計画、採用計画をコンサルティングすること、具体的なプロジェクトがあればファンドレイジングに必要なツールや広報サポート、チラシがあったほうがいいのではないか?など細かいところまで一緒に取り組みます。一方で、リーダーシップコーティングやリジェネラティブとは何か?のような思想面、メンタル面のサポートも提供しています。
2.インパクトアカデミー
インパクトアカデミーは、リジェネラティブな未来を創るための行動を起こす「人」を育成する学びの場です。渡航プログラム、オンラインプログラムのハイブリッドで提供し、教育機関(主に高校)と法人向けに提供しています。私たちは、人々の行動を変えるためには3つの「無」を乗り越える必要があると考えています。
元ユニリーバCEOのポール・ポルマン氏の言葉に「Is this world better off because your business is in it? あなたの会社が存在することで世界はより良い場所となっていますか?」という言葉があります。
多くの人は、地球環境が抱える課題に対して無知なだけです。自分の行動やライフスタイルが課題を引き起こしていることに気づいてもらい、アクションにつなげてもらうことを目指しています。
3.エシカルホテル事業「Mana」
2019年、バリ島にエシカルホテル「Mana Earthly Paradise(マナ・アースリー・パラダイス)」をオープンしました。アース・カンパニーが提唱するのは、事業が発展すればするほど地球も人間社会もよくなっていく循環型ビジネスの仕組みです。このホテルは、自分たちが循環ビジネスを行う、いわば実証実験の場として始めました。
Manaの設備やサービスは、アース・カンパニーの思想を体現したものです。具体的には、施設の屋上にソーラーパネルを設置、運営に必要な照明電力の100%をまかなったり、雨水を貯水して浄水設備でろ過して水を供給したり、しています。
最後に、事業運営に必要な資金計画をご説明させてください。
当団体が運営する3つの柱のそれぞれで2025年までの運営資金を募集しています。
1. インパクトヒーローへのご寄付、3,000万円/年
2. インパクトアカデミーへのご寄付、2,000万円/年
3. 団体全体へのご寄付、2,500万円/年
これまでは主にご寄付で活動、運営の資金を賄ってきましたが、徐々に事業を育てていきます。特に、インパクトアカデミー事業にご支援いただいた寄付金はスタッフの増員(+5名を想定)にあてます。2030年に向けて事業の柱に育て活動費、運営費のすべてを自己収益で捻出できるようにする計画です。
画面左上)SIIF 藤田
画面右上)アース・カンパニー 濱川知宏氏
画面下) アース・カンパニー 濱川明日香氏
最後に代表の明日香氏より、今後支援を考えている方々へメッセージがありました。
地球が厳しい現状にあることは明確ですが、それに対して十分なアクションがない状況です。政府レベルではCOP27のような国際的議論が行われていますが、それだけでは足りません。このような状況で個々の企業が与えられるインパクトは大きく、変わらなければならないところです。一方で、企業を変えるのには個人個人の意識変革も大切です。アース・カンパニーでは、変革を促すことをライフミッションとする人を支援し、企業の構造改革、個人の意識変容の双方にアプローチしています。多くの方の力を借りることができれば、もっともっと地球へのインパクトを広げられることもあると考えています。私たちの活動に共感してくれる人がいれば、ぜひご支援をお願いします。
アース・カンパニーへのご寄付はこちらから
https://www.earthcompany.info/ja/donate/
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