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新型コロナウイルスに取り組む「新しいフィランソロピー」4 ー緊急対応を可能にした欧米のエコシステム(前編)ー

このシリーズでは、米国におけるフィランソロピーの担い手たちが、未曽有のパンデミックにどのように対応したのか、見ていきます。

まとめ
□米国では一般富裕層が設立した家族財団向け支援組織、全米ファミリー・フィランソロピー・センター(NCFP)がいち早く小規模の家族財団向け支援に特化してアクションを起こした。

□フィランソロピーや非営利団体について包括的に発信している米国CANDID.もコロナウィルス感染拡大に対するフィランソロピーの情報をリアルタイムで発信し、グローバル・フィランソロピーの動向を知る貴重な情報源となった。

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これまで3回にわたり、新しいフィランソロピーの新型コロナウィルス感染拡大への取り組みを紹介してきました。新型コロナウィルスが国際社会で大きな注目を集めたのは、中国・武漢市がロックダウン(都市閉鎖)された2020年1月23日。その後、ウィルスは急速に拡大し、3月11日には米国ワシントンDCで非常事態宣言が出され、3月24日には英国では第一回目のロックダウンが実施されました。

これに対し、3月には欧米各国の財団やインパクト投資機関は対応に乗り出しています。このスピード感が、新しいフィランソロピーの特徴の一つですが、彼らはなぜこのように迅速に対応できたのでしょうか。背景には、緊急対応を可能にした新しいフィランソロピーのエコシステム団体の存在があります。今回は、この活動事例を紹介します。

新しいフィランソロピーは、フィランソロピー・アドバイザーやネットワーク団体など多様なエコシステム団体により支えられています。前回、ご紹介したマッケンジー・スコットさんのような大富豪は専属のフィランソロピー・アドバイザー・チームを組織することができますが、一般の富裕層にとって、これは現実的ではありません。このため、新型コロナウィルス感染拡大のような緊急事態が発生した場合には、どの分野のどのような団体がどういった資金を新しいフィランソロピー団体に求めているのかを一般の富裕層に的確に提供し、必要であればマッチングを行う等の支援が必要となります。

アメリカでは、一般富裕層が設立した家族財団向け支援組織、全米ファミリー・フィランソロピー・センター(NCFP)が2020年3月にいち早く家族財団向けにガイドブックを発行しました。この中でNCFPは、まず新型コロナウィルス感染拡大下で自身の家族や財団職員の安全をいかに守るかからガイダンスを始めます。支援活動を通じて、富裕層の家族や財団職員がウィルスに感染してしまっては意味がないからです。その上で、ガイドブックは、既存の支援先団体への対応、新型コロナウィウル感染拡大で新たに発生したニーズへの緊急支援、さらに中長期的なインパクトの実現に向けた取り組みについて説明していきます。ガイドブックには、3月時点で既に活動を始めている緊急支援のためのコミュニティ・ファンドや他の様々な活動に関する情報も掲載されており、小規模の家族財団であっても、効果的に支援を展開できるよう工夫されています。NCFPは小規模の家族財団向け支援に特化していますが、より大規模でグローバルな領域におけるフィランソロピーについては、米国のCANDID.が情報の収集・発信を開始しました。

CANDID.は、2020年3月11日からいち早く新型コロナウィルス感染拡大に対応するフィランソロピーの対応に関する情報を収集し、これをブログ上で定期的に発信し始めました。ブログには、全世界から集められた情報がリアルタイムでアップデートされておりグローバル・フィランソロピーの動向を知る貴重な情報源となりました。ゲイツ財団のように感染症分野で専門性を持つ財団は少数ですから、多くの財団、企業、個人フィランソロピストは、ここで動向を把握した上で、各自の戦略を策定していったと思われます。なお、CANDID.は助成プログラム情報の掲示板も運営しており、ここに新型コロナウィルス感染関連の助成情報を集約することでNPOや社会的企業とのマッチングも行っています。

本記事は後編に続きます。

多摩大学社会的投資研究所 小林立明
SIIF藤田淑子、小柴優子

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