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このシリーズでは、米国におけるフィランソロピーの担い手たちが、未曽有のパンデミックにどのように対応したのか、見ていきます。
本記事の前編はこちら。
まとめ
□欧州ではユニタス・ヨーロッパという期間限定の取り組みが始まり、欧州の主要財団、社会的投資家、フィランソロピストが、新型コロナウィルス対策に関する情報の共有や、ベスト・プラクティスの紹介、さらに協働などを推進するためのプラットフォームとなった。
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これまで3回にわたり、新しいフィランソロピーの新型コロナウィルス感染拡大への取り組みを紹介してきました。新型コロナウィルスが国際社会で大きな注目を集めたのは、中国・武漢市がロックダウン(都市閉鎖)された2020年1月23日。その後、ウィルスは急速に拡大し、3月11日には米国ワシントンDCで非常事態宣言が出され、3月24日には英国では第一回目のロックダウンが実施されました。
これに対し、3月には欧米各国の財団やインパクト投資機関は対応に乗り出しています。このスピード感が、新しいフィランソロピーの特徴の一つですが、彼らはなぜこのように迅速に対応できたのでしょうか。背景には、緊急対応を可能にした新しいフィランソロピーのエコシステム団体の存在があります。今回は、この欧州の主な活動事例を紹介します。
欧州では、ユニタス・ヨーロッパ(欧州の団結)というイニシアチブが設立されました。これは、欧州の主要財団、社会的投資家、フィランソロピストが、新型コロナウィルス対策に関する情報の共有や、ベスト・プラクティスの紹介、さらに協働などを推進するためのプラットフォームです。設立には、欧州財団センター(EFC)、欧州ベンチャー・フィランソロピー協会(EVPA)、インパクト投資グローバル推進グループ(GSG)、欧州財団ネットワーク(NEF)、欧州ドナー・財団ネットワーク(DAFNE)と、欧州のフィランソロピーセクターを代表する5団体が参加しました。
ユニタス・ヨーロッパは、2年間の期間限定イニシアチブですが、最初の6ヶ月をサバイバル期、続く18ヶ月をリバイバル期と位置づけて協働の促進に努めています。同時に、新型コロナウィルス関連プロジェクトへの支援プログラムの情報もプラットフォーム上で提供し、NPOや社会的企業とのマッチングを図っています。
2020年度には判明しているだけで2020億ドルの寄付・助成が新型コロナウィイルス関連プロジェクトになされました。このような巨額の寄付・助成が可能となった背景には、以上のような新しいフィランソロピーのエコシステム団体の地道な努力があったことを忘れてはならないでしょう。
多摩大学社会的投資研究所 小林立明
SIIF 藤田淑子、小柴優子
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