KNOWLEDGE
【本記事のポイント】
■米国にあるBlue Meridian Partnersは、貧困の連鎖(※)に苦しむ若者や家族を支援するため、超富裕層から資金を集めて共に助成する取組で、通常のプログラム運営ではなく団体の将来や成長に対して、成果志向の助成をすることが特徴である。
■効果が証明された支援手法や戦略を全国に展開するため、“Nationwide Solutions”というプログラムでは1団体につき1億ドルを上限に複数年にわたり助成し、これまでに計11団体に助成してきた。
■資金提供者の参加動機の多くは、より大きな問題に共に取り組みながら互いに学び合えることや、経験豊富で幅広いプロフェッショナル人材からのアドバイスやサポートを受けられることである。また、運営においては資金提供者が投資の意思決定に参画するという珍しい仕組みを導入している。
※貧困の連鎖:一度、貧困状態に陥ってしまうと、自力で貧困状態から脱却することが難しく、世代間で貧困が連鎖していくことが問題視されている。Blue Meridian Partnersでは「経済的・社会的流動性が低い」ことを問題と捉えている。
【インタビューについて】
Blue Meridian Partners(以下、BMP)は、貧困の連鎖(※)に苦しむ若者や家族を支援するため、超富裕層などの複数の資金提供者から資金を集めて成果志向の助成をする「新しいフィランソロピーのモデル」を掲げて設立された組織です。貧困からの脱却に対する支援手法や戦略を全米に広げていくため、2016年の設立からこれまでに計11団体に対して複数年にわたる多額の助成(1団体あたり1億ドルまで)をしてきました。今回はBMPのManaging Director, Portfolio & Strategy ManagementのLissette Rodriguez氏に、助成手法の詳細や、それを支える資金提供者、そしてこれまでの学びについて伺いました。
【インタビューに応じてくれた人】
Managing Director, Portfolio & Strategy Management Lissette Rodriguez氏
BMPでは、フィランソロピー投資案件の発掘やデューデリジェンスを行うほか、投資先団体との関係性構築や管理を担当する。また、BMPの前身であるEdna McConnell Clark財団に所属していた時は、副社長兼最高プログラム責任者を務め、Propel Nextというプログラムのマネージング・ディレクターとして若者支援団体のスキル向上や、プログラム効果の向上を図るための企画や監督業務に携わった。これまでに、若者を支援する米国の非営利組織Youth Build USAやボストン財団において勤務した経験も持つ。
BMPはThe Edna McConnell Clark Foundation (以下、EMCF) というプライベート財団によって設立された組織ですが、BMPのアプローチはEMCFが2000年代の中盤に取り組んだコラボラティブ・フィランソロピーという取組が元になっています。当時から共同で助成することは目新しいことではなかったのですが、その取組は二つの点で既存のものとは異なっていました。まずは、事業成果に基づいて助成と進捗管理が行われたことです。そして、成果目標に対する途中経過や結果の報告はEMCFに集約していたため、助成先および他の資金提供者の双方にとって報告に関する負担が大幅に軽減されるという利点がありました。
もう一つは通常のオペレーションに係る運営費を助成するのではなく、団体の今後の成長プランに対して助成したという点です。それまで資金提供の対象となる大抵の費用は既存のある特定の取組を実施するための運営費であったため、助成先の団体は将来に対する投資や準備が出来ずにいました。当時のEMCFはその状況に鑑みて、団体が中長期的に発展してくために必要な費用に投資したことが画期的であったのです。
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