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(上)米国フィランソロピー・アドバイザーに聞く!フィランソロピー・アドバイザーのお仕事について①

提携先のロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズ(Rockefeller Philanthropy Advisors) で長年フィランソロピー・アドバイザーを務めるDonzieにフィランソロピー・アドバイザーのお仕事についてインタビューをさせていただきました。

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小柴)昨年ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズ(以下、RPA)とSIIFでパートナーシップを結んでから、SIIFとRPAで定期的にコールを重ねました。その後、私たちも様々な顧客の方にお話ししたりアドバイザリーでご一緒させていただいたりしてフィランソロピー・アドバイザーとしての経験が積みあがってきています。より多くの方々とご一緒する中で、本場の(笑)フィランソロピー・アドバイザーの人たちはどういう人達なのかという質問をよく受けるので、今日はフィランソロピー・アドバイザーのお仕事についてRPAのDonzelina Barroso(以下、Donzie)に伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。ドンジーの経歴は後編の最後にありますので、ご関心のある方は是非ご覧ください。

フィランソロピー・アドバイザーのキャリアを歩むきっかけ

小柴)最初の質問ですが、フィランソロピー・アドバイザーってどういうキャリアの人がなれるのでしょうか?ドンジーのRPA以前のキャリアと、RPAで働くことになったきっかけを教えてください。

Donzie) RPAの同僚たちは、さまざまなキャリアを持っています。ロックフェラー財団やゲイツ財団などの大手財団で、既にフィランソロピーのキャリアを積んでいる人もいれば、非営利団体で働いていた人もいます。また、法律、金融、アドボカシー(政策を動かすことを目的とした活動)、国際開発などのバックグラウンドを持つ人もいます。特に国際開発の経験は、途上国への資金提供に関心のあるドナーや、多くの国際的な資金提供者が介入する案件で役立つと思います。

私自身の経歴ですが、20年前にRPAと初めて出会ったときには、このようなキャリアがあるとは知りませんでした。当時私はコロンビア大学の国際公共政策大学院(SIPA)で、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、ポルトガルなどのポルトガル語圏に焦点を当てた研究センターに勤務していました。これらの地域の現状や問題点、歴史的なトピックに関するイベントを開催したり、学術誌を発行したり、世界各地のさまざまな研究機関と共同でプロジェクトを進めたりしました。このセンターは助成金によって運営されていたので、私は常に助成金の提案書を書いていました。助成金の提案書を書けるからといって、必ずしも良いフィランソロピーアドバイザーになれるわけではありませんが、実際にRPAで仕事をするチャンスをもらえた時には、助成金を探す側の視点がとても役に立ちました。また、組織が助成金の申請についてどれだけ考えているかを理解するための基盤にもなりました。

また、SIPAで働いたことで、社会問題、経済問題、文化的多様性に関する幅広い知識を得ることができました。また、大学でよく講演をする非営利団体、公共団体、学術団体などの幅広いセクターのリーダーや、仕事を通じて知り合った人たちの話を聞くことは、フィランソロピーアドバイザーとしてのスキルを高める上で非常に役に立ちました。人文科学に基づいた教育は、フィランソロピーアドバイザーとしてのキャリアにも役立つというメッセージなのでしょうね。

私がRPAに参画した当時、RPAはポルトガルで初年度に数百万ドルの助成金を拠出する仕組みの持つクライアントと仕事を始めていました。RPAは、このクライアントの優先事項に沿った組織を特定し、ポルトガルや米国のポルトガル系コミュニティの主要なオピニオンリーダーのネットワークを構築するためのサポートを必要としていたこともあり、この組織にに声をかけたところがRPAが求めていた言語、人脈、専門知識と私の持つものがフィットしたことがRPAに関わりはじめたきっかけです。私はまず、私のネットワークを利用して、クライアントが優先事項として挙げた分野の調査を行い、その分野で優れた活動を行っている地域のグループを特定しました。そこから、私のフィランソロピーへの興味は深まり、この仕事が刺激的で充実したものであると思い、当時、コンサルタントとして働いていたRPAでの仕事を拡大する機会を得て、最終的には正社員になりました。RPAの仕事は最高に面白く、それぞれの地域で重要な問題に取り組んでいる熱心な人々と出会うことができ、非常に謙虚な気持ちにもなります。アメリカだけでなく、仕事で訪れた他の国でも、様々なプログラムを率いる素晴らしい人々に会うことが、とても楽しいです。

20年前、フィランソロピー・アドバイザーの仕事はほとんど知られていなかった

小柴)当時はフィランソロピー・アドバイザーという仕事はまだ一般的に知られていなかったのですね。

Donzie)そうですね。私はこのような仕事があることを知りませんでした。実際に仕事をしてみても、当時フィランソロピーのアドバイザリーを提供している組織はほとんどありませんでした。

小柴)RPAは、日本にフィランソロピーのエコシステムを生み出したいという私たちのミッションに共感してくださり、フィランソロピーセクターの発展という想いをもって活動されている組織だと思っていますが、RPAの強みや特徴はなんでしょう?

Donzie)前述したように、RPAの大きな強みのひとつは、スタッフの経歴や職業経験が多様であることです。今、アメリカで大きな話題となっているソーシャル・ジャスティス(社会正義)を経験して現場に入ってきた人や、アドボカシー志向の強い同僚もいます。もうひとつの強みは、チームで仕事をしていることだと感じています。これは、さまざまなテーマについて複数の視点から意見を聞き、責任を分担することができるだけでなく、お客様によりよいアドバイスを提供することにもつながります。ロックフェラー・ファミリー・オフィスで数十年の経験を積んだ私たちは、長期的な視点でこの分野やトレンド、変化を見通すことができます。

良いフィランソロピー・アドバイザーとは

小柴)専門的な視点と同じくらい、多様な観点からの視点を提供することは重要ですね。ドンジーにとって、良いフィランソロピー・アドバイザーとはどういう人だと思いますか?

Donzie)RPAが設立されて以来、この分野のプレイヤーは増え、プロフェショナル化が進んでいます。また、一般の人々や資金提供者の方々は、フィランソロピーに精通しており、大きな社会的課題に大胆に取り組みたいと考えている方が多いように思います。そのためにはスキルが必要ですから、ある程度の経験がないとこの分野に参入するのは難しくなっているのではないでしょうか。

良いアドバイザーの特徴は、多くの場合、その人の性格や直観が関係しています。その中でも特に重要なのは、お客様の声に耳を傾けることだと思っています。人は自分の言いたいことをストレートに言わないことがあるので、ボディランゲージや発言からその意味を汲み取ることが大切です。最終的には、アドバイザーはお客様との信頼関係を築くことになりますが、これは資金提供者が弁護士やファイナンシャルアドバイザーと関係を築くのと同じで、時間がかかります。また、ファミリーにとって、フィランソロピーへの参加は非常に個人的な取り組みであることを忘れてはいけません。私たちは、非常にプライベートで個人的な事柄に関わることが多いと感じています。これは、仕事の進め方の信頼性や機密性が重要になってくる例だと思います。

良いアドバイザーであるためのもう一つの重要な要素は、クライアントが聞きたくないかもしれないことを恐れずに伝えることです(もちろん、敬意を払った上で)。最終的に、お客様はアドバイザーにアドバイスを求め、情報に基づいた選択をするためにお金を払っているのです。あなたのアイディアのコンセプトを明確に示すことで、考えの背景にある理由や、その提案がもたらす効果をお客様に理解していただきますが、RPAでは、お客様からのフィードバックを受けながら、反復的に作業を進めていきます。そうすることで、お客様が驚くような提案をすることはありません。お客様によっては、会話やブレーンストーミングの時間が限られていることもあり、これは必ずしも容易なことではありません。

しかし、クライアントがファミリーであれ、個人であれ、企業であれ、自分がベストだと思う提案をすることはできても、そのプロセスをコントロールすることはできないということを知っておくことは重要です。プロセスは中断されるかもしれないし、他の優先事項が介入するかもしれない。また、様々な理由から、お客様がアドバイザーの提案に最終的に同意しないこともあります。

【Pick up!】 Donzieがフィランソロピーを始める顧客にオススメしているRPAの発行物

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RPAの発行物の一つで、フィランソロピーを始める人の最初の5つのステップについて書いているYour Philanthropy Roadmapの日本語版です。SIIFは、今回、このハンドブックを翻訳するにあたり、実際に日本で活躍するフィランソロピストの事例を5つご紹介しています。

https://new-philanthropy.org/knowledge/report/temp_report.html

後編に続く。

SIIF 小柴優子

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