このプロジェクトは、PA inc.が、雲孫財団(代表:諸藤周平氏)、離島総合研究所(代表:上田嘉通氏)と共に企画した、日本の地域課題体験ツアーです。
今回は、20代後半~50代の起業家・経営者の方々を中心に、シンガポールからの参加者も含めた総勢15名での、2泊3日の旅となりました。
日本が抱える課題の縮図 「離島」
みなさんは、日本には約400の有人離島があることをご存知でしょうか。
これらの離島は、人口減少や少子高齢化、それに伴う産業の衰退など、日本が直面する多くの課題を真っ先に経験しています。
一方で、日本の国土面積は世界61位であるにもかかわらず、排他的経済水域を含めると、その面積は世界6位。離島の存在は、日本を世界的な海洋国家にしています。
鹿児島県薩摩川内市甑島の山下賢太さん
今回は、鹿児島空港からバス1時間、さらにフェリーで1時間の甑島を訪問しました。人口は約3,800人。高齢化率はすでに50%超(日本の平均29%)。高校がないので15歳で子どもは島を出ます。
訪ねたのは、離島の活性化では知る人ぞ知る、甑島出身の山下賢太さん。「島のために」と行われる公共事業や合併等の政策が大切な島を壊していると危機感を抱き、2012年に「東シナ海の小さな島ブランド株式会社(通称、island company)」を設立。未来の子どもたちのための原風景をつくるために、空き家を活用し、豆腐屋、宿泊事業、カフェ、パン屋、地域産品の開発、デザインなど様々な事業に取り組み、また、同じような悩みを抱える離島による経済圏づくりにも奔走しています。
そんな山下さんとisland companyの皆さんに、活現場を案内いただきながら、島の歴史、文化、生活、取り組みや地域の方々の反応などについて教えていただく2日間。
1日目は、10年かけて彼らが再生してきた場所へ。
ボロボロの古民家は、毎朝焼き立てのパンを目当てに島の人々が集まるカフェや、居心地の良い洗練されたホテルに様変わり。
2日目は、再生を計画している、このままでは終わりを迎えるであろう場所へ。
平均年齢70-80歳の50人の集落、初代村長が暮らした空き家、などです。
参加者からは、その条件の厳しさから、再生のゴールやスケジュール、リソースなどについての質問が相次ぎました。
しかし、山下さんには、再生後の村と人々の変化が、うっすらと見えているようでした。
(集落で企画されているアートフェスティバル KOSHIKI ART 2024)
目指すのは、住民の幸せ
印象的だったのは、山下さんがめざしているのは、今、この土地に住んでいる人々の幸せと安心をつくること。活動は、その上での、観光であり、移住促進である点です。それは、土地の人々のアイデンティティとは?を問うことに始まり、それを確立させ、守っていくことにつながるのだと感じました。
ツアーを終えて、参加者からの感想
・離島の厳しい現実とそれに立ち向かう人々の活動に直に触れることで、わかっていると思っていたことがそうではなく、大変大きな発見があった。
・開国を迫るペリーの気持ちになった。
・社会における自らの役割やアイデンティティを改めて考え直す機会を得た。
・参加された方々との繋がりができたことも大きな財産となった。自分の考え方が大きく広がった。
といった感想が寄せられました。
山下さんやisland companyさんのみなさんとは、とても良いつながりができたので、今後も応援し続けることをお約束し、10年後にまた甑島を訪れたいと、参加者全員で話しながら甑島を後にしました。
大変好評だった、「島つなぎプロジェクト」。
次回は、来春以降、新たな離島を訪問する予定です。
(PA Inc. Co-CEO 藤田淑子)