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新型コロナウイルスに取り組む「新しいフィランソロピー」2 ーコロナ禍におけるインパクト投資(前編)ー

このシリーズでは、米国におけるフィランソロピーの担い手たちが、未曽有のパンデミックにどのように対応したのか、見ていきます。

まとめ

□インパクト投資は社会・環境リターンと共に経済リターンも追求する投資の方法。
□コロナ禍において、課題解決のために活動を広げる社会企業の成長のための資金と、投資家のリスク回避が大きな課題となった。
□インパクト投資を推進するGIINコロナウィルスからはR3(対応 Response, 復興 Recovery,耐性 Resilience) の連合を立ち上げた。

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第2回は、コロナ禍におけるインパクト投資の取り組みを紹介します。

インパクト投資は、社会・環境リターンと共に経済リターンも追求します。このため、新型コロナウィルス感染拡大という危機的状況ではリスク回避を優先せざるを得ません。他方、新型コロナウィルス感染拡大に伴う経済の停滞は、投資先団体の資金繰りを悪化させ、つなぎ資金の需要を高めます。さらに、コロナに対して新たなソリューションを提供できるソーシャル・ベンチャーは、急速に拡大するニーズに対応するための資金を必要とするでしょう。インパクト投資家は、こうしたリスク回避と資金需要の拡大への対応をどうバランスするかという問題に直面しました。

こうした中、グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(GIIN)は、2020年5月、R3連合を立ち上げました。これは、新型コロナウィルス感染拡大という危機に対応(Response)し、復興(Recovery)を支援し、さらにコミュニティや社会の耐性(Resilience)を確保するためのインパクト投資家の連合体です。新型コロナウイルスに対する即時の対応、復興、そして耐性を強化するための投資を加速するための情報交換を目的に、各国のインパクト投資家がこのコミュニティに参加しています。

GIINが参加団体に実施したアンケートによると、新型コロナウィルス感染拡大に伴い投資を拡充する必要がある分野として、「金融包摂(74%)」、「食糧の安定供給(69%)」、「医療・保健(61%)」、「クリーン・エネルギー(49%)」、「教育(48%)」などが挙げられました。さらに多くのインパクト投資家が、投資を継続・強化し、必要に応じて非資金的支援を行うと回答しています。危機に直面しても、インパクト投資家は、リスク回避のための資金引き上げではなく、投資継続と追加支援を選択していることが読み取れます。

R3連合には、マッカーサー財団、ロックフェラー財団などの主要財団以外に、富裕層のファミリーオフィスや家族財団向けにインパクト投資のアドバイスを行うミッション・インベスターズ・エクスチェンジやtoniicなどの中間支援組織も参加しています。R3の分析や提言は、こうした中間組織を通じて世界中の富裕層に共有され、インパクト投資コミュニティが、一丸となって新型コロナウィルスに取り組むことを後押ししています。

この記事は後編に続きます。

多摩大学社会的投資研究所 小林立明
SIIF藤田淑子、小柴優子

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