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“Purpose of Capital(資本の目的)”──Jed Emerson 氏を迎えたクローズドセッションを開催しました

2025年10月、フィランソロピー・アドバイザーズ(PA Inc.)は、インパクト投資やブレンデッド・バリュー*の考え方を世界に広めてきた思想家、Jed Emerson 氏を招き、少人数による非公開セッションを行いました。参加者が率直に思いを語り合い、深い学びが生まれる、静かで濃密な時間となりました。

参加者は、社会課題への関与を高めたいと考える富裕層ファミリーの次世代メンバーや起業家の方々。立場も世代も異なる人々が集まり、「資本の目的」「家族と価値観」「事業と社会インパクト」といった、いま多くの人が直面しているテーマについて、落ち着いた雰囲気の中でじっくりと対話を重ねました。

*ブレンデッド・バリュー:経済的価値・社会的価値・環境的価値を分けて考えず、ひとつの統合された“価値”として同時に生み出すという理念。投資も事業も寄付も同じ連続体として捉えるという考え方。

セッションの概要

セッションではまず、Jed 氏が「資本の使い方と価値の生まれ方」について話しました。
社会ではよく「営利か/非営利か」と二分して語られますが、彼はこの対立そのものが不自然だと言います。実際には資本は連続的で、多様な形で価値を生み出せるものだからです。大切なのは“形”ではなく、「その資本がどんな価値を生むために使われているか」という目的だと強調していました。

次に話題は、家族や個人が資産を社会にどう活かすかというテーマに移りました。ここでも Jed 氏は、「投資手法を考える前に、自分は何を大切にしたいのか、どんな未来に貢献したいのか」という内省が欠かせないと語ります。彼の経験では、世界のファミリーが世代交代でまず直面するのは、“資産をどう守るか”ではなく、“資産が家族にどんな影響を与えるか”という根源的な問いだと言います。

話は企業のサステナビリティにも及びました。ESGやインパクト投資が広がる一方で、形式だけの取り組みやグリーンウォッシングも増えています。しかし Jed 氏は、「本当の変化は内側から始まる」と述べ、自社の価値観や事業の本質を見直すことが、意味ある持続可能性の出発点になると話しました。

質疑では、「利益と社会価値のバランスをどう取るか」「家族の価値観を次世代にどう受け継ぐか」「起業家として責任をどう実践するか」など、実践的なテーマについて活発な対話が行われました。

私たちPA Inc.が大切にしていること

私たちは、今回のようなクローズドでの学びの場に大きな意味を感じています。
理由は、「フィランソロピストが何をするか」よりも、「何を大切にしているか」を明確にすることのほうが、持続的で本質的な社会貢献につながると考えているからです。

寄付や投資という“行為”はあくまで手段にすぎません。
それよりも、

・どんな価値観から行動が生まれるのか
・家族の歴史や物語がどう受け継がれるのか
・資本を通じてどんな変化を生み出したいのか

といった「根っこ」が、人を支え、事業を支え、社会への関わりを支えます。

実際、私たちの支援では、寄付先の選定や資産戦略に入る前に、必ず「価値観の棚卸し」を行います。家族に受け継がれてきた哲学や暗黙の前提、本人がまだ言語化できていない動機を丁寧に確かめるプロセスです。これを適切に行うことで、フィランソロピーは単なる社会貢献ではなく、個人や家族の変容さえ促すものになります。

今回のセッションでも、価値観や目的についての深い対話が自然に生まれました。外側の形式ではなく、内側の問いから始めることの大切さを改めて感じる時間でした。

最後に

今回のクローズドイベントは、参加者が安心して思いを分かち合える、かけがえのない時間となりました。
社会をより良くしたいという意志を持つ方々が、一歩を踏み出すための「静かで、深い対話の場」を、これからも大切につくっていきたいと考えています。

PA Inc. は、意志ある資金が未来にポジティブな変化をもたらすよう、フィランソロピストの歩みに寄り添い続けます。

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